nekopeibooks
読んだ本を紹介します。
霊的人間の誕生を生む経済社会『下流志向』by内田樹
下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち 下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち
内田 樹 (2007/01/31)
講談社

この商品の詳細を見る



経済効率を求め、
悉く性急になった世の中で
学習ほど効率の悪いものはない。
何かを学び、理解し、身につくには、
待ち時間が必要だ。

それをやって何の得になるのか?

それを理解させなければ
子どもたちは学ばないし、
働こうともしないだろう。

というようなことで、
講演録から起こしているからだろうか、
読みやすく、へーなるほどなるほど、
と納得させられる論理が展開される。

まあ、もっとも
それは比較的恵まれた状況下にいる
下流志向の現状であって、
一概にはいえないよなぁとも思う。
もちろんこうした状況も大いに問題。
だが、現実は、さらに複雑で、
問題は、努力したいと願っても
できない社会になりつつある、
ということだろう。

観察すること、
見せること、
そして、待つ、こと。

生き物を育てる上で、
とりわけ大切な三本の柱。
もし、あなたに小さな子どもがいるなら、
この本は読んでおくべきかもしれない。

そして、この本を読むときは
決して途中でやめないでいただきたい。
大切な話が、最後の最後に出てくるから。

「師匠を持たないものは敗れる」

『先生はえらい』
合わせて読むと、
さらに響く。

そして、暗示として、
これからの世の中、
人々の時間の捉え方が
変わってくる、
「霊的な感覚」を
取り入れるようになるだろう
と述べている。

「霊的な感覚とは、
 いわば最大時間モデルである。
 無時間モデルの特徴が
 匿名性と非身体性だとすると
 生物としての本能が
 ぎりぎりのところで
 『そういうのは嫌だ』と
 悲鳴をあげる」

昨今のスピリチュアルブームも
その流れのひとつなのかもしれない。



テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌


誤解こそ学び『先生はえらい』by内田樹
先生はえらい 先生はえらい
内田 樹 (2005/01)
筑摩書房

この商品の詳細を見る


内田樹氏は神戸女学院大学の教授。
著書多数で、なるほど、たしかに、
の頷きが、今もっとも多い著者ではないか。
武道をなさっているためか、
机の上の言葉ではない、
身体の直感が感じられ、
それがさらに、
なるほど感を増しているように思う。

この本は、内田氏の師弟論である。

学び、とは、誤解からはじまる。

学ぶものは、勝手に誤解して、
勝手にあこがれて、勝手に読み取って、
勝手に学んで、勝手に裏切られる。

夏目漱石の、こころ、の先生然り。
そして、恋愛然り。

この本はプリマー新書という
筑摩書房が中高校生向きに出した
新書のシリーズのなかの一冊だ。

だが、学びの只中にいるものには、
この本の本当のところはつかめまい。

高校生が了解するのは数年後、
ひょっとすると、
20年くらい経ってからに
なるんじゃないか。

むしろ、大人のみなさんが
読むべき本です。
いつか立派な勘違いの対象に
なれるよう。
えらい先生に、ね。




テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌


贅沢な言葉『ぼくの人生案内』by 田村隆一
ぼくの人生案内 ぼくの人生案内
田村 隆一 (2006/12/05)
光文社
この商品の詳細を見る


田村隆一氏。
98年に75歳で亡くなっている詩人である。
彫りの深いハンサムで
ウイスキーが好きなダンディな老人。
80とか90まで生きたような気がしていたのだが
享年75なんて、意外と若かったんだ。

『ぼくの人生案内』は、以前小学館から出ていた
単行本の文庫版で、なぜか光文社刊。
タイトルどおり、若者の悩み事に答える
人生案内のインタビュー集。
お酒が飲めない、
女にもてない、
作家になりたい、などなど、
若者のたわいもない弱り事に
詩人の翁が詩人の言葉でアドバイスする。

アドバイス部分は、おそらくインタビューを
書き起こしたものだろう。
が、ワンワード、
ワンセンテンスが、すでに詩。


子離れしない母親に悩む女性には
「いっそ、亡命するか」と提案する。

亡命、ってさ、
すでに詩、だと思う。

で、作品としての詩、なんだけど、
『ぼくの人生案内』には
寄りぬき隆一先生というべき
いくつかの詩が収録されている。

10代の終わり頃
「帰途」という詩が好きだった。


「言葉なんかおぼえるんじゃなかった
 言葉のない世界
 意味が意味にならない世界に生きてたら
 どんなによかったか」


ここから先、
かっこよくて
切なくて震える。
最後で、帰途、の意味がわかる。
意味が見えるときのあの嬉しさ。
書き写して、
何度も何度も暗誦した。

『ぼくの人生案内』には
贅沢なことに「帰途」が収録されている。

言葉を買う。
一言に金を払う。
それだけの価値を生む言葉。

10代の私に
最初に意識させてくれた人が、
詩人、田村隆一だった。